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女医さんの屈辱1 教授のセクハラ

 ノックをするとドアの向こうから「入れ」という声が聞こえてきた。あたしは扉を開けて、教授室に足を踏み入れた。
 まだ医局の下っ端に過ぎない20代の私が教授に直接 呼び出されることなんて、ほとんどないことだ。
「お呼びでしょうか、遠藤教授」
 教授室の中央辺りに立ってあたしは言った。
 なるべく医者らしく背筋が真っ直ぐになるよう意識する。しかし、尊大な印象を教授に与えるわけにはいかないので、手を前で重ね、顔をほんの少しだけ俯かせる。
 教授は絶対権力者だ。何かと世間様のうるさい昨今、一応、大学病院の悪しき慣習は改善されつつある。まあ、そのへんは病院によるけれど。で、あたしの属する医局は、まだまだ動きが鈍く、自主改革には至っていない。
 形だけはそれらしくしているのだけどね。その一環で、うちの教授の権力がいくらか削がれたようだが、しかしそれは、昔と比較すればの話だ。現在でも、基本的に教授の意向ひとつで大抵の物事は決まるし、すでに決まったことが引っ繰り返ったりもする。
 なにしろ医局の人事権を未だ握ったままなのだから、教授の影響力は陰に陽に大きなものがある。種々の決定権が医局内で分散されても、結局は教授がすべてを進めてしまう。昔と違うのは、直接か間接かくらいのことだろう。それでもだいぶ前進していると言えるのかもしれないが。

「今日は君に大事な話があってねぇ」
 遠藤教授は意味ありげに言った。
 若くして大学教授にまで上り詰めた実力者……だったのは昔のことで、今は禿げ上がった弱々しい老人でしかない。
 昔は、極めて難しい手術を立て続けに成功させ、その一方で、世界的にも注目される論文を次々に発表してきた、らしい。
 腕が衰えて手術室に入ることすらほとんどなくなった今の教授を見ていると、全盛期の活躍を聞いてもそれを信じるには少なからず努力を要した。
 遠藤教授は、手術の腕が衰えただけでなく、自ら研究を行うこともなくなり、部下から上がってくる論文を横取りしてばかりいた。
 技術も頭脳も退化させてしまった老人に残されたのは、権力だけだった。彼は権力を弄ぶことしか頭になく、彼の意に沿わなかった医局員はことごとく地方の病院に飛ばされていった。
 まったく、人間というのは堕ちる時はどこまでも堕ちるものだ。

「お話というのは何でしょうか」
 あたしは目を伏せがちにしながら聞いた。やれやれだ。小中高大と学生時代は常にトップを走ってきたこのあたしが、なんでこんな老いぼれのご機嫌を窺わないといけないのだろう。遠藤教授を前にするたびにあたしはそう思う。
「近々、栃木の系列病院にひとつ医局の空きができるらしくてね。うちからひとり送ろうかと思うんだが、君、どうかね?」
「わ、私がですか……?」
 さすがに動揺が声に表れた。
 私はこれまで様々な雑用を引き受けてきた。何年も掛けて完成させた論文を教授の手柄にされても、黙って耐えてきた。なのに、その挙げ句が左遷?
「おいおい、君、そう恐い顔をするな。冗談だよ、冗談」
「え? あ、はあ」
「栃木には別の者に行ってもらおうと思っている。講師の木根くんにね。そうなると、講師が空席になるわけだが、君、どうかね」
「講師? しかし私はまだ……」
「先輩をひとり飛び越すことになるが、君の能力からすれば順当だろう。日本でも若い教授がちらほらと生まれているような時代であることだし、これくらいはさして珍しいことでもあるまい。とにかく、2階級特進だ。おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
 私は戸惑いながら頭を下げた。あまりに突然のことに思考が追い付かない。左遷されるのかと直前に思っただけに、落差が大きすぎる。
 左遷は冗談なんて教授は言っていたけれど、あるいはこうして私を困惑させることが狙いだったのではないだろうか。
 だとしたら、次に来る言葉は……。
「とはいえまだ本決まりではない。君の考えを色々と聞いてから決めても遅くはないだろうと思ってね。話によっては君を栃木に送るというのも有り得なくはない。栃木の田舎に行くか、大学病院に残って出世するか、君次第というわけだ。まあとにかく、ゆっくりと話をしようじゃないか。ゆっくりと。教授室には誰もいないのだからね」
 遠藤教授はそう言って、私の全身を眺め回した。
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